2017年8月18日に、アメリカNew Balance（新平衡）会社（下記、アメリカ新平衡社と称する）の傘下の中国会社である新百倫貿易（中国）有限公司（下記、新百倫社と称する）より、深圳市新平衡運動体育用品有限公司（下記、深圳新平衡社と称する）を含めた複数の被告に起訴したNew Balance運動靴商品の商標権侵害事件に対して、蘇州市中級裁判所（下記、蘇州地裁と称する）は一審判決を下した。蘇州地裁の判決では、被告が侵害行為と不正競争行為を直ちに差し止めると同時にお詫びの謝罪をして、原告の新百倫会社の経済損失及び合理な支出で合計1,000万元強を全額賠償することになった。
New Balanceブランドは、1906年にボストンで誕生され、百年以上の歴史を歩んで、New Balance運動靴は世界中の同業界においてベストセラー製品となり、“ジョギング靴の王”と呼ばれている。全世界に知名度が非常に高く、消費者からも愛用されている。20世紀80年代、New Balance運動靴は初めて中国に進入し、売上高が運動類ブランドで前列に位置している。
特に、New Balance運動靴には、独特なマークの設計が含まれ、靴の両側に目立った英語の大文字“N”マークを使用している。アメリカ新平衡会社は、本件の原告である新百倫会社が中国国内における“NEW BALANCE”などの商標、商品名称とマークの非独占的使用を許諾し、アメリカ新平衡会社が持つ当該権利へのあらゆる侵害行為に対して、単独或いは共同に訴訟を起こすことは可能である。
本件の一被告である鄭 朝忠氏は2014年7月28にアメリカコロラド州で“USA New Bai Lun Sporting Goods Group Inc”という会社を設立した。また、その会社名を“アメリカ新百倫体育用品有限公司”に翻訳し、この会社名義をもって、中国国内にある深圳新平衡社に商標権の使用を許諾し、中国で係争運動靴を大量に生産し、深圳新平衡社の公式サイト、中国版ツイッター、WeChat、Taobao及び全国各地に広がっている数百軒の専売店などのルートを利用してその販売を広めた。被告である摶斯達克貿易有限公司は靴製品の製造メーカーとして、経営が実質に鄭 朝忠氏にコントロールされ、係争運動靴の開発と生産を担当している。被告である王 敬印氏は呉江新品衡靴屋の経営者である。
鄭 朝忠氏は“N”商標（当該登録商標の出願が拒絶された）の登録を申請し、係争運動靴に対する商標権使用を他の被告に許諾した。係争運動靴は、許可を受けずにアメリカ新平衡会社の登録商標と類似した商標を使用しただけでなく、New Balance運動靴が持つ“靴の両側に‘N’マーク”という最も識別性のある設計を無断に使用した。それと同時に、本件複数の被告には、商標権侵害と虚偽な宣伝行為の疑いもある。
被告の上述行為により、新百倫会社側は巨大な経済損失を受け営業上の信用が損なわれたため、2016年8月1日に、本件複数の被告に対して蘇州地裁へ起訴した。被告が新百倫会社の登録商標専用権への侵害行為と不正競争行為を直ちに差し止め、侵害品の在庫のすべてを廃棄するとともに、原告に経済損失及び合理な支出を合計1,000万元強賠償すると請求した。
蘇州地裁は審理後、2017年8月18日に、本件に対して一審判決を下した。被告の深圳新平衡会社、鄭 朝忠氏と摶斯達克貿易有限公司が、有名商品の独特な設計を無断に使用したという不正競争行為、商標権への侵害行為、及び、虚偽宣伝という不正競争行為を差し止めること；上述の被告三者が共同に原告に対して経済損失及び合理な支出を合計1,000万元と賠償するほか、本件の判決発効日から30日間以内に全国的新聞紙に謝罪の声明を掲載すること；被告の王 敬印氏が無断に独特な設計を使用した製品の販売を差し止め、原告に経済損失及び合理な支出を合計15万元を賠償することです。
本件において高い賠償額は、充分に中国裁判所による知的財産権への保護力が益々高まることを反映している。また、同類事件の審理にも示唆される。
（中国知的財産新聞により改編）
