近年、複数のＡＩプラットフォームが相次いで登場し、インターネット上でＡＩブームを巻き起こしている。生成ＡＩ（Ａｒｔｉｆｉｃｉａｌ Ｉｎｔｅｌｌｉｇｅｎｃｅ Ｇｅｎｅｒａｔｅｄ Ｃｏｎｔｅｎｔ， ＡＩＧＣ）による権利侵害問題は、避けて通れない「成長の悩み」となっている。
２０２４年２月８日、広州インターネット法院は、国内初のＡＩＧＣ著作権侵害事件（「広州ウルトラマン事件」）の判決を下した。２０２４年９月２５日、杭州インターネット法院は、国内第２例目のＡＩＧＣ著作権侵害事件（「杭州ウルトラマン事件」）の判決を下し、同事件は２０２４年１２月３０日に杭州市中級人民法院で第二審が行われ、原判決が維持された。この２件の「ウルトラマン事件」は、いずれもＡＩＧＣ分野の典型的事例であり、生成ＡＩの侵害認定および責任分担に重要な司法実践の参考となる。
両事件の原告はともに上海某文化発展会社であり、同社はウルトラマンシリーズ作品の中国における著作権独占実施許諾権を有す。
「広州ウルトラマン事件」では、被告である某ＡＩ会社が運営するＴａｂウェブサイト（仮名）が、ＡＩ対話およびＡＩ画像生成サービスを提供している。ユーザーが「ウルトラマン」などのキーワードを入力すると、ウルトラマンのイメージと実質的に類似する画像が生成された。広州インターネット法院は、一審判決で、被告の行為が原告の複製権および翻案権を侵害すると認定したが、情報ネットワーク伝播権の侵害については評価しなかった。
「杭州ウルトラマン事件」では、被告である杭州の某智能科技会社が運営する某ＡＩプラットフォームが、画像またはテキストコンテンツを生成するためのＣｈｅｃｋｐｏｉｎｔベースモデルおよびＬｏＲＡモデルを提供し、ユーザーが画像をアップロードしてトレーニングを行い、ウルトラマンのイメージと実質的に類似する画像を生成できるようになった。杭州インターネット法院は、一審判決で、被告が原告の情報ネットワーク伝播権に対する侵害行為の協力を構成すると認定したが、直接侵害または不正競争には該当しないと判断した。原告は、杭州市中級人民法院に上訴し、被告の行為はさらに不正競争に該当すると主張したが、第二審裁判所は、被告のＡＩプラットフォームの行為は不正競争には該当しないとして、上訴を棄却し、原判決を維持した。
（法治日報－法治網より引用編集）
コメント：
２件の「ウルトラマン事件」は、いずれもＡＩＧＣプラットフォームによるウルトラマンイメージの侵害問題を扱っている。しかし、事件の詳細、侵害認定および責任分担において一定の差異がある。「広州ウルトラマン事件」では、プラットフォームが直接侵害コンテンツを生成したため、コンテンツ提供者と認定され、原告の複製権および翻案権の侵害が認められた。一方、「杭州ウルトラマン事件」では、プラットフォームは技術的支援のみを提供し、ユーザーが被告の運営するプラットフォームを通じて画像をアップロードし、モデルをトレーニングして侵害画像を生成したため、プラットフォームは技術サービス提供者と認定され、侵害行為の幇助が認められた。
「広州ウルトラマン事件」は、世界初のＡＩＧＣプラットフォーム侵害事件とし、生成ＡＩサービス提供者がコンテンツ生成過程において負うべき責任を明確にし、苦情受付制度の確立、リスク提示、明確な表示などの合理的注意義務を強調した。この判決は、ＡＩＧＣプラットフォームのコンプライアンス運営に重要な司法上の指針を提供している。
「杭州ウルトラマン事件」はさらに、プラットフォーム責任の認定を細かくし、ユーザーが生成した侵害コンテンツに対するプラットフォームの責任範囲を明確にした。プラットフォームは、直接侵害コンテンツを提供していなかったが、合理的注意義務を履行していなかったため、侵害行為の幇助という責任を負うこととなった。また、第二審判決は、データトレーニング行為が、一定の条件下でフェアユース（公正使用）を構成し得ることを強調し、技術革新と知的財産保護のバランスを図る必要性を示した。
したがって、２件の「ウルトラマン事件」は、ＡＩプラットフォームおよびその開発者にとって以下の示唆を与えている：
・プラットフォームは、苦情受付制度、リスク提示、明確な表示などの合理的注意義務を確立する必要がある；
・プラットフォームは、ユーザー行動の監視を強化し、侵害コンテンツの拡散を防止すべきである；
・データトレーニング行為については、プラットフォームはデータ使用の合法性を確保し、出力段階で技術的措置を講じて侵害コンテンツの生成および拡散を防止すべきである。
つまり、２件の「ウルトラマン事件」は、新興技術に直面する際に司法実践の柔軟性と先見性を示している。これらの判決は、ＡＩプラットフォームの責任認定に関する明確な基準を提供するとともに、知的財産保護と技術革新のバランスを図る上で重要な参考となる。
（上海専利電気物理事業一部 任吉慧より原稿提供）
