1月6日、最高人民法院は記者会見を開き、「高品質な審判による科学技術イノベーション保障に関する最高人民法院の意見」および人民法院の科学技術イノベーション保護の典型的な事例を発表した。これらの事例には、発明特許の付与・確定紛争、技術秘密や営業秘密侵害事件などが含まれている。
その中で、上海市高級人民法院（2022）沪民終281号「北京金某安全ソフトウェア有限公司（以下、金某公司）と上海萌某ネットワーク科技有限公司（以下、萌某公司）とのGUI意匠権侵害紛争事件が、グラフィカルユーザーインターフェース（GUI）の意匠権を法的に保護し、インターネット産業のイノベーション発展を促進する」という典型的な事例として選ばれた。
北京金某安全ソフトウェア有限公司（以下、金某公司）は、「移動通信端末用グラフィカルユーザーインターフェース」という名称の意匠権（以下、係争意匠）の権利者である。この意匠には10の類似デザインが含まれており、そのうちデザイン10の図面には、動的なインターフェースを含むスマートフォン正面の図が描かれている。一方、上海萌某ネットワーク科技有限公司（以下、萌某公司）は「趣某某」という入力ソフトを開発し、iPhoneおよびAndroidシステム向けのダウンロード版を提供していた。金某公司は、これらの入力ソフトのGUIが係争意匠のデザインと同一または類似しており、萌某公司の行為が金某公司の意匠権を侵害していると主張した。
本事件では、具体的な民事責任以外に、以下の2点が争点となった：一、係争特許の保護範囲および侵害の比較結果、二、被告が開発し、被疑侵害ソフトウェアを無償でダウンロード可能な形で他人に提供する行為が原告の特許権を侵害しているかどうか。
これに対し、上海高級人民法院は次の意見を示した：本件の係争意匠は「移動通信端末用グラフィカルユーザーインターフェース」という名称であるが、意匠の図面に示されている内容は、GUIの動的な変化過程を表示するスマートフォンであるため、係争意匠は動的GUIを含む移動通信端末製品である。スマートフォンの形状は一般的なデザインであるため、意匠の全体的な外観に実質的な影響を及ぼしない。現実には、GUIを含む製品はハードウェア、OS（オペレーティングシステム）、アプリケーションソフトウェアなどが異なる主体によって提供されることが一般的である。GUIデザインが表示されるためには複数の主体が共同または相互に作用する必要があり、特定の主体に直接的な侵害責任を負わせることができない場合には、各主体の行為の性質および責任の負担方法を客観的に判断する必要がある。被告は、特定または特定可能なGUIデザイン効果の発生を明確に認識しており、そのような結果を追求する意図があった。つまり、ユーザーが被告のソフトウェアを使用して侵害が疑われるスマートフォンの外観を表示する際、このソフトウェアは不可欠な実質的役割を果たしており、アプリケーションソフトウェアを提供するだけで侵害の主な原因となったと認定される。被告が営業目的で侵害が疑われるソフトウェアを開発した行為は、侵害が疑われるGUIを含むスマートフォン製品の主要な実質部分を製造したことに等しいと判断された。最終的に、上海高級人民法院は上海知識産権法院の一審判決を支持し、萌某公司が侵害責任を負うべきと認定した。
最高人民法院は次のように指摘した。グラフィカルユーザーインターフェース（GUI）は考案者の創造活動を反映しており、その出願および登録は当該分野の産業発展のニーズを示している。法に基づく保護を強化することは、技術革新の推進に重要な意義がある。本判決は、GUI意匠権侵害判断の裁判ルールを明確にし、特許権の厳格な保護と市場主体の創造的活動の奨励を体現している。中国のインターネット産業の良好な環境の維持および工業デザイン分野の健全な発展に積極的な意義がある。
コメント：
近年、モバイルインターネットやスマートデバイスの急速な発展に伴い、GUI関連の意匠権やそれに関する紛争が増加している。特許法の第4次改正の施行および「工業デザイン国際登録ハーグ協定」の正式な発効に伴い、「専利審査指南」もGUIに関する審査手続と審査基準を更新した。GUIは製品の一部として意匠権保護を受けることが可能であり、GUIの特殊性に基づき、製品全体の意匠、部分的な意匠、または動的GUIなど、さまざまな形態で柔軟に保護を受けることができる。
最高人民法院が発表した典型事例を踏まえ、GUI意匠権を出願する際、以下の点に留意することで出願の質を向上させ、より包括的な保護を実現することができる。1.簡単な説明において各図面の相互関係を明確に記述し、参考図を適切に提出することでGUI設計案をより良く説明することが重要である。2. 静的GUIについては、簡単な説明にインターフェース内の各アイコンの用途および操作方法を記載することを推奨する。3.静的GUIと動的GUIの組み合わせや、全体意匠設計と部分意匠設計の組み合わせを活用して出願を行うことができる。
（上海専利国内事業部 房湛、陳天翔より原稿提供）
