最高人民法院は嘉興市中華化工有限公司（以下、「嘉興中華化工社」という。）及び王龍グループ有限公司（以下、「王龍グループ」という。）などの会社よる技術的秘密侵害の上訴事件について判決を下し、被疑侵害者である王龍グループなどの会社が技術秘密の権利人に1.59億元を賠償するよう命じた。これは人民法院の史上最高賠償額の企業秘密侵害案件となる。
「バニリン」は世界中で広く使用されている香料である。本件の原告である嘉興中華化工社と上海欣晨新技術有限公司（「上海欣晨社」という。）は共同でバニリンの新しい製造プロセスを開発し、技術的秘密として保護していた。関連するバニリンの製造技術とプロセスは、中国国内で複数の賞を受賞している。本件の侵害前には嘉興中華化工社は世界最大のバニリンの製造業者として世界のバニリン市場シェアの約60％を占めていた。
2010年に嘉興中華化工社の元従業員、被告である傅祥根氏は同じ被告である王龍グループから報酬を受け取った後、「バニリン」の技術的秘密を王龍グループの監査役、寧波王龍科技股份有限公司（「王龍科技社」という。）の取締役会長、本件の被告の一人である王国軍氏に開示した。同時に被告である王龍科技社に入社した。2015年に一人の被告である喜孚獅王龍香料（寧波）有限公司（「喜孚獅王龍社」という。）が設立され、王龍科技社が出資したバニリンの生産機器でバニリンを生産し続けている。王龍グループ、王龍科技社は「バニリン」の技術的秘密を不法に取得した後、2011年6月からバニリンの生産を開始した。嘉興中華化工社の国際と国内のマーケットシェアはこれに大いに影響され、国際マーケットシェアは60％から50％に低下した。
2018に嘉興中華化工社及び上海欣晨社は、浙江省高級人民法院に提訴し、王龍グループ、王龍科技社、喜孚獅王龍社、傅祥根氏、王国軍氏が「バニリン」に関する技術情報を不正に取得したとし、上記被告らが権利侵害を停止し、5.02億元を賠償するよう主張した。第一審裁判所は王龍グループ、王龍科技社、喜孚獅王龍社、傅祥根氏は一部の技術的秘密の侵害を構成していると認定し、侵害を停止し、300万元の経済的損失及び権利主張の合理的な費用として50万元を賠償するよう命じた。同時に、第一審裁判所は訴訟で、王龍科技社、喜孚獅王龍社が係争技術を利用してバニリンを秘密に生産することを停止する裁定を下したが、王龍科技社及び喜孚獅王龍社は実際にはその使用行為を停止しなかった。
王国軍氏を除いて、本件のすべての当事者は第一審の判決を不服として最高人民法院に上訴した。第二審において、嘉興中華化工社及び上海欣晨社は賠償請求額を1.77億元（合理的費用を含む）に引き下げた。
最高人民法院の知的財産法廷は第二審を経て、王龍グループ、王龍科技社、喜孚獅王龍社、傅祥根氏、王国軍氏は全ての係争技術的秘密を侵害したと認定し、権利人が提供した経済的損失に関するデータに基づき、侵害の深刻な状況、係争技術的秘密には莫大な商業的価値があること、王龍グループなどの侵害人は行為保全裁定の実施を拒否したなどの要素を総合的に考慮したうえで、第一審判決を取り消し、各侵害人が技術的秘密の権利人に対し1.59億元（合理的な権利保護費用として349万元を含む）を連帯賠償するよう判決を変更した。さらに、係争技術情報に対する侵害行為は情状悪質で、被害が深刻であるため、刑事犯罪の疑いがある。よって、最高人民法院は刑法により関連する被疑犯罪情報を公安部門に転送して対処するものとする。
（「知的財産界」のプレスリリースより引用編集）
