特許侵害訴訟における挙証責任転換の画期的適用 ――(2022)最高法知民終1316号事件に対する評釈
引言
特許侵害訴訟において、権利者は、侵害者の技術方案が秘匿されていることや、製品を分解できないこと等の要因により、しばしば「立証困難」という問題に直面する。このほど、最高人民法院は(2022)最高法知民終1316号事件を指導判例として公表し、本判例は挙証責任転換のルールを柔軟に適用することにより、同様の困難に対して画期的な解決策を提示した。本稿は本件を切り口として、その裁判論理および知的財産権保護に与える深遠な影響を分析するものである。
事件の背景:技術検証不能下における立証の困難
原告である江蘇省の某科技会社は、「配管用耐高圧回転補償器」に関する発明特許を保有しており、被告である江蘇省の某管件会社が製造・販売する製品が当該特許を侵害している疑いがあることを発見した。しかし、被疑侵害製品は大型配管ネットワークに既に設置されており、現場での技術検証を行うことができず、技術方案を直接対比することに客観的な障害が存在していた。
このような状況下で、原告は、被告の公式ウェブサイトに掲載された電子カタログにおける同一シリーズ製品の構造図を対比資料として提出し、侵害の成立を主張した。しかし第一審裁判所は、電子カタログは実際の製品の技術的特徴を直接証明するものではないとして、原告の請求を棄却した。この判断は、技術系事件における従来の立証ルールの限界を示している。すなわち、「主張する者が立証する」という原則を厳格に適用した場合、権利者は客観的条件の制約により権利救済を受けられない可能性があるという問題である。
第二審における突破:「高度の蓋然性」に基づく責任転換
最高人民法院は第二審において原判決を取り消し、以下の裁判ルールを確立した。
1.初歩的立証の認定基準
裁判所は、原告が提出した電子カタログと被疑侵害製品が同一シリーズに属し、かつ構造図に示された技術的特徴が特許請求の範囲と高度に一致していることから、侵害が「高度の蓋然性」を有することを証明するに足りると認定した。この判断は、権利者に求められる初歩的立証のハードルを引き下げ、間接証拠の証明力を肯定するものである。
2.挙証責任転換の合理性
裁判所は、挙証責任の配分は、当事者双方の立証能力、証拠の保有状況等の要素を総合的に考慮すべきであると強調した。被告は製品の製造者として、技術図面や製造契約等の重要証拠を掌握しているにもかかわらず、原始媒体を欠く図面のみを提出し、その真実性を証明することができなかった。裁判所による釈明後も有効な反証を提出することを拒否したことは、「証拠妨害」に該当し、不利益な法的結果を負担すべきであるとされた。
3.推定ルールの適用
『民事訴訟法』司法解釈によれば、当事者が正当な理由なく証拠の提出を拒否した場合、裁判所は相手方の主張が成立すると推定することができる。本件において裁判所は、被疑侵害製品の技術方案が電子カタログの内容と一致すると直接推定し、最終的に当該製品が特許権の保護範囲に属すると認定した。
裁判論理:「形式的公平」から「実質的正義」への転換
本件の核心的価値は、裁判所が挙証ルールを機械的に適用するのではなく、動的な証拠配分を通じて実質的正義を実現した点にある。
・訴訟能力の均衡:特許権者の取証困難性および侵害者による証拠の独占という特性を踏まえ、責任転換によって双方の能力格差を是正した。
・証拠妨害行為への抑止:証拠提出を拒否する行為に対して不利な推定を課し、悪意による責任回避を抑制した。
・誠実な訴訟の誘導:当事者に対し積極的な立証義務の履行を求め、訴訟手続の公正性と効率性を確保した。
事例の示唆:知的財産権保護への深遠な影響
1.権利者に新たな立証手法を提示
権利者は、侵害者の公開情報(公式ウェブサイト、パンフレット等)を優先的に活用して初歩的な証拠連鎖を構築することができ、直接的な取証が不可能であっても、挙証責任転換を引き起こす可能性がある。
2.企業の証拠管理義務の強化
企業は技術資料の保存プロセスを適切に整備すべきであり、訴訟において真実の証拠を提出できない場合、敗訴に直結するリスクを負う可能性がある。
3.司法実務の進化を促進
本件は、知的財産事件における専門化審理の趨勢に呼応し、裁判所が能動的司法を通じて技術系事件の複雑性に適応しようとする姿勢を示している。
結語
(2022)最高法知民終1316号事件は、挙証責任転換ルールを革新的に適用することにより、特許侵害訴訟における立証困難を打破し、形式的公平から実質的正義への飛躍を実現した。その裁判理念は、権利者に実効的な権利救済の道筋を示すのみならず、市場主体に対して経営行為の規範化を促すものであり、誠実な法治環境の構築において画期的意義を有する。今後、技術の発展に伴う取証上の課題が一層増大する中で、このような司法上の創意は、知的財産権保護の重要な支柱となるであろう。
(上海専利 化学医薬生物事業部 陳 哲峰より原稿提供)
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